第3回:大 切 な 一 歩
翌朝、
茜は一時間早く起きて、ノートを
取り出した。
そのノートには、前日から頭を
離れなかった言葉が大きく
書かれている。
自分の人生をどう生きるか?
茜は、その言葉をじっと見つめた。
この問いに対して、
今まで答えることを避けてきたから。
思い出されてくる数々の過去の映像
・仕事だけに費やした日々
・大切に思っていたはずのパートナー
友人や家族とのシーン
・自分自身と向き合う必要を感じても
スルーして誤魔化し、寝た夜
今まででは。。ね
けれど、今朝は違う。
そのたった一つだけど、一番大きな
問いに向き合い、答えを出すための
一歩を踏み出す日だと感じて動いた。
茜はペンを手に取り、ノートに
書き始めた。
最初は言葉が出てこなかったが、
少しずつ心の中にある
小さな願いや
夢が文字や絵となって現れてきた。
それは、誰かに見せるためのもの
でなく、自分自身のためだけの
回想リストだった。
やっぱり私、
「このままでは終わりたくないんだ」
もっと、
「自分のことを大切にしたいんだ」
ずっと、
「やってきたヨガに、もう少し
時間を使って探求したい」……
そんな些細な願いが出てきた。
「私、自分の心の中にある想いに全然
無頓着だったわ。。」
「心で感じるよりも頭で考えてばかり
いたのかも・・・」
だったら
「この週末に、時間を取って、心の
点検をしてみようかな」
そういえば
「昔、読んだ本の中にブレインダンプ
っていう手法があったわ」
茜は、待ち望んだ週末、朝6時から
ブレインダンプを17年ぶりに
やってみた。
頭の中にある言葉が無くなるまで
全てを書き出す、吐き出すワーク。
10月の連休、丸々3日間掛けて
書き出した。
その数734個のワード。
まだまだ足りない、1000個超えて
からが本当の正念場のブレインダンプ
一生に一回で良いとも言われている。
(アメリカの成功者は
年に1回書き出す人もいる)
茜は2回目だ。
600個目くらいから、少しずつ
具体的な夢や目標も出てきた。
長い間、心の中に閉じ込めていた
想いが、ノートのページに溢れ出す。
「こんなにたくさんのことを
望んでいたんだ……」
自分でも驚くほど、
茜の中には多くの希望があった。
それは、今まで妥協の生活の中で
忘れようとしていたもの、こと、
人脈なのかもしれなかった。
こうして書き出して、見渡すと
それが自分の本当の気持ちだと
確認できた。
茜はノートを閉じて、
安堵の笑みを浮かべた。
「このメモに今の私、全てが書き
出してあるわ」
「もう、頭にある言葉は全部書いた
から、空っぽになって軽くなったし」
「じゃぁ、これからどうして
いきたいの?」
「そうだわ、ここに書かれている事に
ヒントがあるんだった」
ブレインダンプは優れた手法で、
自分を映し出す鏡ならぬ紙が
出来上がる。
完璧な答えは、まだ出ていない
かもしれない。
それでも、この一歩を踏み出した
ことで、何かが大きく
変わり始める予感があった。
<第4回:ライフコーチとの出会い>
へつづく